【熱中症とは】
人間を含め、哺乳類の生き物は、体温を常に一定に保っています。
ところが、極端な高温に長時間さらされると体温調節ができず、体温が上昇してしまいます。
これが熱中症です。
人間は、気温が高いと汗をかき、汗が蒸発する時に身体の熱を奪うこと(気化熱)を利用して、体温を下げる調節ができますが、汗をほとんどかかないイヌやネコはこれができません。
正確には、イヌやネコには汗腺(かんせん)と呼ばれる組織は存在しますが、人間のように全身から多量の汗をかくような機能はありません。
汗をかかない(汗量が少ない)動物は、肺の中の暖かい空気を吐き出し、体温よりも低い温度の外気を吸って身体を冷却することが主な対応になります。
(ウサギなどは大きな耳(耳介)から熱を放散すると言われます)
また、動物の多くが人間に比べて高密度の体毛におおわれているのも、身体から熱を放散するのに不利な条件です。
このような理由で、動物の熱中症は起こりやすいと理解しておくべきでしょう。
具体的には、体温が43℃を超えると、身体を構成するタンパク質の変性が始まり、全身の組織が元に戻らないダメージ(焼肉が元の生肉に戻らないのと同様)を受けて死に至ると言われています。
【熱中症の症状】
◆発熱の原因(感染症や腫瘍など)が無い条件での、高体温状態を原則とします。
◆下記の体温の数値は目安と考えてください。
初期 開口呼吸(口を開けて呼吸)、粘膜の充血 体温40℃超
中期 ①呼吸速拍(呼吸が異常に速い)、皮膚の充血、体温41℃超
② ①が持続すると、呼吸困難、意識混濁など
重症期 意識障害、嘔吐、けいれん、多臓器不全、脳障害など 体温42℃超
末期 体温43℃超、不可逆的な(元に戻らない)組織の変性→死亡
【熱中症の予防】
①室内
・動物の居場所の温度を26℃以下に保つ。(※)
※ エアコンの設定温度ではなく、動物の周囲の実際の温度のことです。
エアコンの性能、部屋の構造、窓や家具の位置などで、実際の温度は異なります。
・暑さ、涼しさに応じて動物が居場所を選べるようにする。(※)
※ 停電や故障などでエアコンが停止する場合も想定しておくと良いでしょう。
・日光が直接当たらないようにする。
・飲み水を絶やさない。
・エアコンが無い状況なら、できるだけ風通しを良くする。
②屋外
・日向を避ける。
・日陰でも高気温の環境下に長時間滞在しない。
・こまめに飲み水を与える。
・状況によっては動物の身体に常温の水をかけ、風をあてる。
③車内
・日光が直接当たらないようにする。(※)
※ エアコン稼働中の車内でも、日光が当たる状況で熱中症が起きた事例があります。
・外気温が25℃以上なら、自動車内に動物を残さない。(※)
※ 興奮しやすい動物、呼吸状態に問題がある動物は、25℃以下でも危険な場合があります。
④熱中症になりやすい動物の条件を把握しておきましょう
・短頭種(鼻の短い種類)
鼻の短い動物は、呼吸による体温調節がうまくできず、熱中症のリスクが高い。
例 イヌ : パグ、シーズー、フレンチブルドッグ など
ネコ : ペルシャ、ヒマラヤン、エキゾチックショートヘア など
・肥満
標準体型よりも冷やさなければならない肉体が大きいため、体温調節が追いつかない。
余分な脂肪が圧迫することで、呼吸機能自体が低下しやすい。
・呼吸器疾患、循環器疾患
呼吸状態の悪化により体温調節能力が低下している恐れがある。
・高齢
呼吸機能が低下している恐れがある。
認知機能不全の動物は、体温調節がうまくできない恐れがある。