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  • ◯不妊手術・去勢手術について
  • 2025/02/18
  • ○不妊手術・去勢手術について
     不妊手術は女性の卵巣・子宮を摘出し、去勢手術は男性の精巣を摘出する手術のことです。
     そもそもは、どちらも繁殖制限を目的として始まった手術ですが、現在は他の利点があるために、そちらを目的に実施されることが一般的です。

    【不妊手術・去勢手術の長所と短所】
    ■長所・利点
    ・予定外の妊娠・出産が無くなる
    ・繁殖期が無くなり、管理しやすくなる
    ・卵巣・子宮及び精巣に関連する病気が無くなる、または起きにくくなる
    ・特にオスの動物では、おとなしくなり飼育しやすくなる(条件によります)

    ■短所・欠点
    ・太りやすくなる
    ・子孫は残せなくなる
    ・被毛の変化(密度、太さなど)の可能性 → 大多数の動物が、全く変化しない、または、わからない程度の変化です
    ・尿失禁 → ほとんど起きない、と言っても良い確率です
    ・手術に伴う痛み → 大多数の動物が、鎮痛薬などの投与でコントロールできます

    【不妊手術・去勢手術 解説】
     不妊手術・去勢手術で取り除く卵巣・子宮、精巣は、子孫を残すために必要な臓器ですが、動物個々の生命を維持するための臓器ではないので、切除しても寿命が短くなるわけではありません。
     むしろ、病気の予防などに役立ち、寿命は長くなる可能性が期待できます。

    □不妊手術
     不妊手術では卵巣・子宮を取り除くので、卵巣・子宮そのものの病気が発生しなくなります。
     実際に、緊急手術が必要になる『子宮蓄膿症(子宮内で細菌が増殖して膿が溜まり、放置すると死亡する可能性が非常に高い病気)』の症例件数は減っています。 

     女性ホルモンなどが関連して起こると考えられている、卵巣・子宮以外の病気、例えば乳腺腫瘍の発生確率も低くなります。
     乳腺自体を除去しているわけでは無いので発生確率0%とは言えませんが、若いうちに手術を受けた動物は、乳腺腫瘍が起きにくい傾向が明らかです。
     また、卵巣を摘出することによって女性ホルモンの影響が除去されると、性周期に伴う体調や行動の変化が無くなります。
     繁殖を目的に異性を求める行動も無くなります。

    □去勢手術
     去勢手術も同様で、精巣を取り除きますから、精巣そのものの病気は発生しなくなります。
     また、精巣摘出によって男性ホルモンの影響が無くなると、前立腺の病気や、男性ホルモン依存性の他の病気も発生確率が低下します。
     例えば、イヌの肛門周囲腺腫は、若イヌのうちに去勢手術を受けると発生確率が低いことが知られています。
     男性ホルモンの影響が無くなると、行動の変化も見られることがあります。
     去勢手術後は、異性を巡っての興奮や攻撃性・ケンカが減る可能性が高く、尿の「マーキング(イヌ)」「スプレー(ネコ)」(テリトリー内に自分の尿を付けて縄張りを主張する行動)も減ることが期待されます。
     ただし、一部の動物は去勢手術を受けても攻撃性やマーキング・スプレーが改善しない場合もあります。
     攻撃性が改善しない事例については、性ホルモン以外の要素、例えば育った環境による性格形成や、生まれついての性質などが影響していると思われます。
     スプレーが減らない事例は、長期間にわたってマーキング・スプレー行動を続けてきたために、テリトリー意識とは無関係の、単純な排尿行動として習慣付いてしまっている可能性も考えられます。

    【術後の肥満傾向について】
     不妊手術・去勢手術の最大の短所・欠点は太りやすくなることです。
     個体差もあるので、必ず太ると決めつけはできませんが、太りやすくなる動物の方が多いと思われます。
     以前は、手術を受けた動物は「食欲が増える」「運動量が減る」などの理由で太りやすくなる、などと言われていましたが、実際には「食餌の量・質」「運動量」が手術の前と後で同じでも、太る動物はいます。
     このような動物については、食欲と運動の条件では説明がつきません。
     現在は、性ホルモンの影響が無くなると基礎代謝が減少するために太りやすくなると解釈されています。
     基礎代謝とは、生命維持のために日々必要な最低限のエネルギーのことです。
     全く運動しなくても、生きているだけで消費するエネルギーという言い方もできます。
     基礎代謝が少なくなれば、必要なエネルギー量は手術前に比べて少なくてよいということになりますから、食餌量や運動量が変わらなくても、食餌で得たエネルギーが手術後は余ってしまい、それが太る原因になります。
     近年は、不妊・去勢手術後の動物のためにカロリーを抑えたフードがありますから、これらを利用するのも対策のひとつです。
     ただし、低カロリーのフードでも、大量に食べると太る恐れがありますから、計画的に給餌しましょう。
     適切な「摂取カロリー量」と「消費カロリー量(運動など)」を心がけていただければ、コントロール可能と思われます。

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