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  • ○意外と知られていない『動物が食べてはいけない身近なモノ』
  • 2025/03/17
  • タマネギ・ネギ類の中毒は有名なので多くの飼い主さんはご存知だと思われますが、それ以外にも動物に与えてはいけない、もしくは与えない方が良い身近な食品があります。

    【キシリトール】
     キシリトールは、ヒトにとって安全性が高い食品成分ですが、特にイヌでは中毒を起こします。
     キシリトールには「カラダに良い」イメージがあるのか、キシリトールを問題視する情報はあまり見かけませんが、ヒトでも軟便や下痢の原因になることはあるようです。
     イヌのキシリトール中毒は、2004年頃にはすでに報告されているにもかかわらず、一般には意外と知られていない問題です。
     多量摂取で低血糖、肝障害などを起こし、急性肝不全による死亡例が報告されています。
     中毒量はほぼ判っており、イヌの体重1キログラム当たり1グラム以上を摂取すると、なんらかの症状が始まると考えられます。
     ヒトが口にする一般的なキシリトールガムでは、1粒に約0.5グラムのキシリトールが含有されていると言われているので、体重1キログラムの子イヌが2粒食べれば、中毒量に達する可能性があります。
     キシリトールはガム以外にも、歯磨きペーストやマウスウォッシュ、サプリメントなどだけでなく、化粧品や消臭剤などの身近な日用品にも含まれているため、特に室内飼育のイヌにとっては普段の生活環境にありふれた中毒成分と言えるでしょう。

     なお、キシリトール中毒の解毒剤はありません。
     摂取直後であれば、動物病院での吐き出させる処置(催吐処置)により中毒を免れる可能性はあります。
     症状が始まってしまったら、対症療法しかありません。
     ネコでは、キシリトール中毒は起こりにくく、中毒症例もほとんど知られていません。

    【チョコレート・ココア類】
     イヌは甘いものを好む傾向があり、チョコレート製品を誤って食べてしまう事例は珍しくありません。 

     中毒の原因物質はチョコレートの原材料であるカカオに含まれる「メチルキサンチン」(カフェイン、テオブロミンなど)で、チョコレート製品によって含有量がかなり異なります。
     メチルキサンチン中毒量(摂取量)と症状は以下のとおりです。

    [動物の体重1キログラム当たり]
    20ミリグラム       嘔吐、下痢など
    40〜50ミリグラム    不整脈、頻脈などの循環器症状
    60ミリグラム以上     けいれんなど

     なお、体重1キログラム当たり100〜200ミリグラムを超えると、摂取した動物の半数は死亡すると言われています。
     カカオ70%などの高濃度チョコレート製品であれば、製品10グラムでメチルキサンチン約100ミリグラムを含む計算になりますので、体重1キログラムの子犬にとっては致死量に達する恐れがあります。
     さらに、ココアパウダーはチョコレートよりも高濃度で、10グラム中に200ミリグラムを超える量のメチルキサンチンを含んでいるようです。
     ココアパウダーを使う際には、動物に与えないのはもちろん、こぼしたりしないように慎重な取り扱いが必要でしょう。
     メチルキサンチン中毒の解毒剤はありません。
     摂取直後に吐き出させることができれば、中毒の危険性は低下するかもしれませんが、症状が始まったら対症療法のみとなります。
     なお、メチルキサンチンのひとつであるカフェインは、コーヒー、紅茶やコーラなどにも含まれていますから、これらも注意が必要です。

    【ブドウ・レーズン】
     動物のブドウ中毒事例はかなり以前から報告がありましたが、中毒原因成分は現在でも未特定のまま、不明です。
     生のブドウだけでなく、干しぶどうやブドウの搾りかすでも中毒の報告があるようですから、どのような状態のブドウでも、含まれている食品は動物が食べないように管理する必要があります。
     また、ブドウの中毒については個体差が大きいようで、少量の摂取でも中毒が起こった例が報告されています。
     以上の情報をもとに考えれば、ブドウの状態・摂取量に関わらず、ブドウを食べてしまった動物は中毒を起こす恐れがあると理解しておくべきです。
     中毒の症状としては、腎不全が起こり、死亡する恐れがあります。
     ブドウ摂取後、半日以内に嘔吐、下痢、食欲低下などが始まり、腎機能低下による尿量の低下などが見られるようになります。
     血液検査で、腎機能に関連する数値が悪化していることがしばしば確認されます。
     摂取直後に吐き出させることが必要で、積極的に輸液も実施します。
     輸液以外に、解毒剤もしくは解毒が期待できる治療はありません。

    【牛乳】
     牛乳には「乳糖」という成分が含まれており、これを消化するためには腸内に「乳糖分解酵素(ラクターゼ)」が必要になります。
     イヌもネコも、この乳糖分解酵素が極端に少ない、もしくはほとんど持っていない場合があり、そのような動物は乳糖をうまく消化できずに下痢を起こす恐れがあります。
     中毒という意味ではありませんが、幼若な動物はひどい下痢を起こすと死亡する可能性もあり、牛乳を与えてはいけません。
     一方で、牛乳の風味を好む動物は少なくないので、飼い主さんが与えるつもりは無くても、こぼれた牛乳を舐めてしまうなどの場合も考えられます。
     少量の牛乳摂取でも軟便・下痢が起こる可能性はあります。
     また、高気温の時期に牛乳を放置すると腐敗しやすいので、食中毒がおこる原因にもなります。
     もちろん、乳製品に対してアレルギーが起こる動物には与えてはいけないのは当然です。

    【スルメ】
     イヌもネコも捕食(肉食)系の動物の特徴として、飲み込める大きさの食べ物はほとんど丸飲みします。
     歯の構造上、ヒトとは違って食べ物を細かくすり潰す「咀嚼(そしゃく)」はできません。
     このため、スルメなどを与えてしまうとある程度の大きさのまま丸飲みし、胃液などから水分を得たスルメは胃の中で膨張します。
     飲み込んだ大きさの数倍以上、条件によっては10倍にも膨らむことがあるようです。
     結果的に膨張したスルメによって消化管の通過障害が起こる恐れがあります。
     食べ物であるとは言っても、一瞬で溶けて消化されるわけではないので、異物を誤食・誤飲したのと似た状況になります。
     飲み込んだ時の数倍〜10倍の大きさに膨張していると、大き過ぎて嘔吐も困難、腸へも流れて行かない、という、かなり追い込まれた状況に陥ってしまいます。
     その他の干物類でも同様の問題が起こるかもしれません。

    【非加熱の卵白】
     全卵では問題は起こりません。
     卵白には「アビジン」という成分が含まれており、このアビジンがビタミンB群の1種である「ビオチン」の吸収を阻害します。
     ビオチンは「ビタミンB7」、「ビタミンH」などとも呼ばれています。
     ビオチンが不足すると皮膚炎、脱毛などの皮膚症状が起こりやすい、もしくは悪化しやすくなります。
     原因成分であるアビジンは加熱すると不活化すると言われていますが、加熱の条件次第では不完全かもしれず、意図的に卵白だけを与えるのは避けた方が無難でしょう。
     また、卵黄にはビオチンが豊富に含まれていますので、卵黄を含めての全卵であれば、ビオチン欠乏症は起こりません。
     飼い主さんがお菓子を作られるような際に、動物にメレンゲを習慣的に与えてしまうと、この問題が発生する可能性はあります。
     当然、卵が原因のアレルギーが起こる動物には、全卵も含めて与えるべきではありません。

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