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  • 手術の傷は小さい方が良いの?
  • 2025/09/11
  •  手術の傷は小さい方が良いの?

     手術の内容によっては、安全な手術手技を実施するために、あるいは術後の安全のために大きく切開した方が良い場合があります。

     手術を実施する症例の条件によっては、小さな切開(手術で組織を切り開くこと)では無理な場合があります。

     よく行われるイヌ・ネコの不妊手術を例に考えてみましょう。

     不妊手術は「開腹手術」で、お腹を切開して卵巣・子宮を摘出します。

     卵巣は腹腔(お腹の内部)の頭の方(前の方)で、腎臓の近くにあります。

     子宮は子宮頚部付近で切断しますが、子宮頚部の位置は腹腔のおしりの方(後ろの方)で、膀胱の近くにあります。

     切除する卵巣から子宮頚部までの腹腔内での長さ・距離は、小型犬やネコでも5〜10㎝あります。

     その両端の切断・止血作業を、切開したお腹の切り口(術創と言います)を通して実施するわけですから、安全な手術操作のためにはある程度の大きさの切開が必要です。

     狭い術創(切り口)では、手術操作が困難になり、無理に臓器を引っ張るようなことにもなりかねません。

     また、術創が小さいと見える範囲が狭いので、腹腔内で予定外の出血があっても発見しづらい恐れもあります。

     手術を実施する獣医師の考え方によりますので見解が分かれると思われますが、安全性を重視するため必要に応じてある程度の大きさを切開し、無理のない手術操作を実施する方が危険が少なくて良い、という考え方はあり得ます。

     同じ内容の手術でも、病院によって傷の大きさが違う場合があるのは、手術手技の違いだけではなく、手術の安全性についての認識の違いが理由の場合もあると思われます。

     参考までに、手術の傷が癒合(ゆごう)( = 傷がくっついて回復すること)にかかる時間は、2㎝の傷も3㎝の傷も変わりません。

     また、別の例として腫瘍の摘出手術の場合は、腫瘍組織の取り残しを防ぐために、腫瘍本体の大きさよりも広く、大きく切除することが原則になります。

     周囲の組織への腫瘍細胞の浸潤(しんじゅん)( = 周囲の組織に染み込むように腫瘍細胞などが拡散・増殖すること)は、手術現場の肉眼では確認不可能です。

     このため、腫瘍組織・腫瘍細胞の取り残しの可能性をできるだけ低くするためには、腫瘍の周囲の組織をできるだけ広く切除する必要があります。

     つまり、術後の「腫瘍の再発を防止する」という安全のためには大きな切除が必要なこともあるのです。

     結果的に、飼い主さんが想像されるより大きな傷になることもあると思われます。

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