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  • アレルギー用のフードに変更しましたが、アレルギー症状がなかなか改善しません。どうしてでしょうか?
  • 2025/12/05
  • アレルギー用のフードに変更しましたが、アレルギー症状がなかなか改善しません。どうしてでしょうか?

    食物アレルギーの皮膚症状は、適切なアレルギー対応食に変更しても改善に時間がかかります。また、厳密な食べ物の管理ができているかどうかも影響するかもしれません。

    【アレルギー検査済みで、食物アレルギーが確定している場合】
    ① 食物アレルギーは症状が改善するのに時間がかかります
     食物がアレルギーの原因である場合は、その患者さんにとってのアレルゲン(アレルギーの原因物質)を含まない食生活にすれば、改善が期待できるのはみなさんのご想像のとおりですが、現実には改善が始まるのに相当な時間がかかることがあります。
     アレルゲンを含まないフード、つまりアレルギーが起きないはずのフードに切り替えても、皮膚にアレルギー症状が見られる場合は、何週間も症状が改善しない時期が続くことがあります。
     実際に、症状が改善するのに4〜8週間程度かかる例もあります。
     今日フードを変更して、明日から皮膚症状が劇的に改善しなくても不思議ではないのです。
     動物病院でアレルギー検査などを実施した上で適切なフードに変更する場合なら、病院から「改善に要する時間」について説明があると思います。

    ②アレルギー対応食以外のものを食べていないか再確認してみましょう
     アレルギー対応食以外のものを食べる・なめるなど、わずかでもアレルギーを起こすかもしれない成分を摂取すると、いつまでもアレルギー症状は改善しません。
     食物アレルギーが確定しているなら、アレルゲンが含まれていない専用のアレルギー対応食と新鮮な水以外のものを摂取してはいけません。
     アレルギーは厳密な対応が必要です。
     アレルギー管理に「少しぐらいなら…」という発想は通用しません。
     過去の事例でしばしばあったケースでは、飼い主さんのご家族内で動物の食べ物について意思統一できていないと、アレルギーのコントロールがうまくいきません。
     厳密な食べ物の管理をされる方がいらっしゃる一方で、「食餌制限された動物がかわいそう。少しぐらいなら他の食べ物を与えても良いだろう」という考えの方が家族・関係者内にいらっしゃると、いつまでもアレルギー症状の改善は期待できません。
     また、飼い主さんが意図的に与えるつもりは無いけれども、動物が「勝手に」アレルギーが起こる食べ物を食べてしまうケースもあります。
     床に落としてしまった食材を動物が見つけて食べるなどのアクシデントも、アレルギー管理が不完全になる要因になります。

    ③サプリメントなどを与えていませんか?
     アレルギー対応食を与える場合は、基本的にサプリメントなども与えないことをお勧めします。
     サプリメントの原材料によってはアレルゲン物質を含んでいる場合があるため、これが原因でアレルギーが起きて症状が改善しない可能性があります。
     普段からアレルギー症状の対策としてサプリメントを与えている例はあると思われますが、アレルギー対応食以外の成分を摂取しているという意味では、上記②のケースと違いはありません。
     「アレルギー症状のためのサプリメント」はアレルギーの原因にならないような誤解や思い込みは珍しく無いので、アレルギー対応食の成果が得られない理由が併用しているサプリメントである場合は意外と多いのかもしれません。

    ④食物以外のアレルゲンの影響を考慮する必要があるかもしれません
      食物アレルギーの対応が間違っていなくても、食物以外の原因でアレルギーが起きているとアレルギー症状が継続する恐れがあります。
     アレルゲン検査で陽性反応があった食物以外の項目を再確認してみましょう。
     食物アレルゲンの検査しか実施していない場合は、花粉など他のアレルゲン項目の追加検査を検討する必要があるかもしれません。

    ④アレルギー以外の原因が影響している可能性があります
     細菌性皮膚炎や真菌性皮膚炎、ノミ寄生などが起きていれば、アレルギー対策を正しく実施していても症状の改善が見られない場合があります。
     アレルゲン検査を実施する前に、細菌や真菌(カビ)による皮膚炎の除外診断は済ませているはずですが、アレルゲン検査実施後に細菌や真菌が感染・増殖する例もあります。
     私たちヒトや動物は無菌室で隔離生活しているわけではないので、細菌や真菌による皮膚炎は食物アレルギー対策中であっても、常に発生する可能性があります。

    【アレルギー検査を実施していない場合】
     まだ動物病院でアレルギーと診断されていない場合は、まず受診してください。
     一見アレルギーのように思われる症状が、アレルギーではなかった症例も多々あります。
     アレルギー性皮膚炎については、診断はおおまかに以下のようになります。

     ⑴病院でアレルギー以外の原因を鑑別診断
      ①アレルギー性皮膚炎と混同しやすい疾患の除外診断を実施
      ・ノミ寄生による皮膚炎
      ・ダニ寄生による皮膚炎
      ・細菌性皮膚炎
      ・真菌(カビ)性皮膚炎 など
      ②状況によってはホルモン検査などを実施する場合もあります。

     ⑵鑑別診断によりアレルギー以外の原因が見つからなければアレルゲン検査を実施
      ①アレルゲン検査の結果が症状に当てはまる場合にはアレルゲン対策を開始
       食物アレルゲンが陽性であれば、そのアレルゲンを除去した食餌に変更します。
       アレルギー性皮膚炎の改善には4〜8週間程度の時間がかかる場合があります。

      ②アレルゲン検査の結果が症状に当てはまらない場合はアレルゲン検査項目の再検討
       食物アレルゲンは一般的な「免疫グロブリン検査」では確定しない場合があります。
       その場合は、「リンパ球検査」が追加検査として必要になります。

    【アレルギー診断を受けていない自己流対策の問題点】

     ❶そもそも、その症状はアレルギーなのでしょうか?
     飼い主さんがよくアレルギーと思い込まれる「痒みを伴う皮膚炎」症例の中には、細菌やノミなどによる皮膚炎が含まれていることが珍しくありません。
     このため、当院を含めて皮膚科診療を実施している病院では最初にアレルギー以外の鑑別診断を確実に行い、症状の原因がアレルギー以外では説明できないことを証明した後に、始めてアレルギー検査を飼い主さんに提案します。
     皮膚科診療施設で、初診からいきなりアレルゲン検査を実施することはほとんどありません。
     アレルゲン検査を実施すると、複数のアレルゲンが陽性になることがあります。
     現在の症状の原因はその内のひとつだけで、その他の陽性アレルゲンはさほど問題にならないケースもあります。
     検査結果で判明した陽性アレルゲンが全て症状に関与しているとは限らないわけです。
     つまり、実際には症状の主な原因がアレルギーではない場合でも、検査を実施すると陽性アレルゲンが見つかる例もあり得るのです。
     このような症例もあるため、皮膚科診療施設ではアレルゲン検査の前に皮膚炎の見極めに手間をかけるのです。

     ❷アレルゲンが食物とは限りません
     アレルギー検査を受けていない場合は、アレルギー症状であってもその原因が食物とは確定できていません。
     アレルギーは、ハウスダストや花粉など食物以外の原因が関与している症例も多いのです。
     本当は食物アレルギーではない動物に「アレルギー対応フード」を与え続けても症状が改善しないのは当然予想される結果です。
     このように飼い主さんが食物アレルギーだと誤解している場合では、フードの変更を延々と繰り返すことになってしまうかもしれません。
     

     また、食物がアレルゲンではあるけれども、同時にハウスダスト・花粉などもアレルゲンである症例があります。
     そのような例では、フードの変更によって食物のアレルギー反応は減少しても他のアレルゲンのアレルギー反応は継続するので、結果的に「アレルギー対応フード」を続けても症状が完全には改善しない恐れがあります。

    ❸食物アレルギー症状の改善には時間が必要です
     食物アレルギーがあり、「アレルギー対応フード」がそのアレルギーに適しているとしても、皮膚のアレルギー症状が改善するには前述のとおり4〜8週間程度の時間がかかる場合があります。
     動物病院でアレルゲン検査を実施したうえで選んだフードに変更する際には、症状の改善に要する時間について病院から説明があります。
     インターネットなどで入手した「アレルギー対応フード」で自己流の対策を実施されている場合では、改善に時間がかかることを知らない飼い主さんも少なくないようです。
     中には、フードを変更した当日から症状の改善があると誤解されている飼い主さんがいらっしゃるようです。
     その場合、フードを変更しても直後には症状が改善しないため、そのフードを諦め次々に新しいフードを試し、結果的にフード変更を延々と繰り返しても、いつまでも改善しない可能性があるのです。

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