- ○てんかん
- 2026/01/30
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いわゆる「けいれん」や「ひきつけ」が起こる症状は「てんかん発作」である場合も多いですが、てんかんではない症例も多々あります。
動物がけいれん・ひきつけを起こした場合は、短時間で回復したとしても、必ず動物病院で受診してください。【「てんかん」って何?】
「てんかん」は、「けいれん・ひきつけ」のイメージが強い一方で、「脱力症状」が見られることもあります。
医学・獣医学の定義では、「てんかんとは、大脳の神経細胞が異常興奮することによって生じる発作」で、原因や症状(臨床所見)は様々です。
全身性のけいれんが最もよく見られる症状ですが、幻覚や意味のない反復行動などが発作として現れるケースもあります。
てんかん発作が立て続けに起こる状態を「発作の重積(じゅうせき)」と言います。
重積状態が続くと重度の障害や死に至る恐れがあるため、てんかん発作を放置してはいけません。◉ここが重要◉
てんかんを疑う発作を1度でも確認したら、発作が速やかに終息したとしても、必ず動物病院で受診してください。
理由は、てんかん発作は定期的もしくは不定期に繰り返し起こる例が多いからです。
飼い主さんが初めてご覧になった発作が、実際にはその動物にとっての初回の発作ではない可能性があります。
過去の発作が、飼い主さんの目の前では起こらなかっただけかもしれません。
発作の多くは数分以内に終わることも多いので、過去にも飼い主さんが見ていないわずか20〜30分の間に発作を起こし終息していた可能性があり得るのです。
動物自身が、発作が起きたことを飼い主さんに事後報告してくれるわけでもありません。
したがって、てんかん発作が起きたその場に、たまたま飼い主さんが居合わせた場合でなければ、飼い主さんが発作の有無を確認できない、ということを理解しておく必要があります。
前述のとおりてんかん発作は繰り返し起こる場合が珍しく無く、発作回数が増えると次の発作がさらに起きやすくなる傾向があります。
そのような動物は、今起きた発作の次の発作が近々起こる恐れがあり、発作重積を防ぐ必要があるかもしれないことを考慮しなければいけません。【てんかんはなぜ起こるの?】
「脳の内部の神経細胞の興奮性が高まる」か、「神経細胞の興奮を抑制するシステムが低下している」、もしくはその両方のために、大脳の神経細胞の異常な興奮状態が発生することにより、てんかんが起こると考えられています。【てんかんの原因と発作の症状の型】
てんかんについては、原因と発作のタイプ(発作型)とで分類します。
ここからは専門用語が多くなりますことをご了解ください。
[てんかんの原因による分類]
・特発性てんかん
脳に組織的・構造的な病変が無く、発作を起こす原因が遺伝的な条件以外は考えられないてんかん発作を「特発性てんかん」と言います。
発作が起きていない期間は、外観上ほとんど異常が認められない場合が多く、言い換えれば、発作の現場を見逃すとてんかんを患っているとはわからないでしょう。
発作の初発は生後6ヶ月〜5歳が多いと言われています。
イヌはこの特発性てんかんが多い傾向があります。
・構造的てんかん(かつての症候性てんかん)
頭蓋骨内の、脳やその周囲に発作の原因となる組織的・構造的な病変が認められるケースを「構造的てんかん」と呼びます。
脳炎、脳腫瘍、水頭症などが構造的てんかんの代表的な原因です。
原因の疾患により発症年齢は様々で、例えば水頭症は1歳未満が多く、脳腫瘍は中年齢以上が多いと思われます。
ネコでは、どちらかと言うとこの構造的てんかんが多いと言われています。
・反応性てんかん発作
脳以外の疾患などが原因で発生する、てんかんのような症状の場合は「反応性てんかん発作」と呼び、構造的てんかんとは区別することが一般的です。
(例:中毒、肝性脳症、低酸素症、低血糖など。これらの疾患では脳組織は正常であり、一過性に機能障害を受けた状態。)
[てんかんの発作型による分類]
・焦点性発作外観上も、脳波上も、発作が脳の限られた一部分から始まったと推測できる発作のことです。
この場合、脳の内部で発作が始まった部位(発作焦点と言います)によって症状は異なります。
例えば、四肢のうちの一肢だけが無意味な動きを繰り返し(これが発作症状)、その他の様子は異常に見えないような症例です。
発作焦点の部位によって、意識がある場合と無い場合とがあります。
発作の影響が脳全体に広がると、後述の全般発作につながることもあります。
・全般発作
外観上も脳波上も、脳全体で一斉に始まる発作で、例えば四肢の症状なら、左右の差が無く両側性に発症します。
発作の始まりと同時に意識障害(気を失うなど)も起こると考えられます。
動物のてんかんで、しばしば見られるのは「全般強直間代性発作」です。
「全般強直間代性発作」の典型例では、はじめに全身性の突っ張るようなけいれん(強直性けいれん)が起き、その後に関節が突っ張ったり曲がったりを繰り返すようなけいれん(間代性けいれん)へ変化し、発作は数分以内に終息する場合が多いと思われます。
なお、てんかん発作にはけいれんを起こさない例があり、意識障害のみの症状だと「突然、気を失って倒れ込む」ように見える場合がありますが、臨床現場での経験上はそのような症例は少ないと言えます。【てんかんの診断】
てんかんの診断は基本的に「除外診断」になります。
除外診断とは、似たような症状の可能性がある他の疾患や問題を調べることで、原因を絞り込んで行く作業のことです。
てんかんを特定する血液検査項目などはありません。
このため、除外診断によって「てんかん以外の原因が見つからない」ことを証明する必要があります。
なお、獣医学科がある大学などで「脳波検査」ができれば、てんかん診断の有力な根拠になると考えられますが、そのような大学病院でも除外診断は必ず実施します。
一般の動物病院では除外診断は行いますが、脳波検査が可能な施設はあまりありません。【てんかんの治療は?】
てんかん以外の発作の原因が特定できれば、その原因疾患の治療を実施します。
除外診断によって、他の発作原因の可能性がすべて除外されると、てんかんの治療に進むことになります。
特発性てんかんであることが確定的であれば、抗てんかん薬と呼ばれる薬剤を使用した治療になるでしょう。
前述のように、てんかん発作の発生機序には「脳神経細胞の興奮の高まり」、もしくは「脳神経細胞の興奮を抑制するシステムの低下」が関わりますから、治療には神経細胞の興奮を鎮める薬剤や、興奮の抑制システムを強化する薬剤が使用されます。
ただ、外観上はどちらのタイプの治療が当てはまるかの区別は困難なので、まず確率が高いと推測できる薬剤を投与し、効果が期待どおりでなければ、異なる作用の薬剤に切り替え、もしくは追加併用します。
いずれの薬剤も、安定して効果が現れるのに数日から2週間程度、もしくはそれ以上の継続投与が必要になる場合があるので、効果がある薬剤を投与中でも、治療開始直後にはまだ発作が起こる場合もあります。
治療前の時点で、頻繁に発作が見られていたような症例は、投薬によるコントロールを一生継続する必要があるかもしれません。




