- ○良く効く薬は強い薬剤なのですか?
- 2026/02/10
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良く効く薬は強い薬剤なのですか?
治療効果が良好なのは、強力な薬剤を使ったからとは限りません。いわゆる「適材適所」で、症例に合った適切な薬剤や治療であれば、薬剤が強力かどうかに関係無く良好な効果が現れるのは想定どおりです。【適切な治療・投薬によって効果が得られるのは当然の結果で、「強さ」とは関係無い場合は多々あります】
具体例を考えてみましょう。
大腸菌はよく知られた細菌ですが、大腸菌に対する効果がある抗菌剤は「第2世代セフェム系」などです。
一方、「リンコマイシン」などの抗菌剤は大腸菌には効果が期待できないことが知られています。
この場合、第2世代セフェム系抗菌剤がリンコマイシンよりも強力なのではなく、リンコマイシンの作用機序が大腸菌に通用しないのです。
逆に、「クラミジア」という細菌にはリンコマイシンは効果がありますが、第2世代セフェム系の抗菌剤は無効です。
薬剤が効果的かどうかは、その薬理作用が、症例や標的(抗菌剤の例なら対象になる細菌の種類)に適しているかどうかで決まります。
これは薬剤の「強さ・弱さ」とは無関係の条件です。
薬剤以外の例をあげると、飼い主さんがストレス性の皮膚障害と思い込んでいた動物が、本当はアレルギー性皮膚炎だったケースがあります。
このような症例なら、ストレス対策をいくら重ねても改善しなかった症状が、アレルギーの原因を排除するだけで改善したとしても不思議ではありません。
この場合では、ストレス対策よりもアレルギー対策の方が「強い」とか「キツイ」「負担が大きい」などの話ではなく、単純に的を得た対処を実施したかどうかの違いになります。
有効であることと、薬剤や治療の「強い・弱い」が無関係である場合は多々あるのです。【重度の病態だと、いわゆる強力な薬剤でも効果が見られないかもしれません】
悪性腫瘍がある程度以上に進行してしまうと、「抗悪性腫瘍剤(いわゆる抗ガン剤)」の効果が期待できなくなるのはよく知られていると思います。
抗ガン剤などは治療を受けた患者さんの大半で何らかの副作用が見られ、一般的に「強い」「キツイ」と認識されがちな薬剤の代表ですが、それでも効果が期待できない症例もあります。
「良く効く薬は強い」という発想は、もしかすると「強い薬を使えば病気は治る」という考え方が根本にあるのかもしれませんが、残念ながら「強い薬」と呼ばれる薬剤を使っても、病態によっては治らない・改善しない病気もあります。
同じ病気に同じ薬剤を投与しても、軽症なら効果があっても、重症では効果が見られないことはあり、薬剤の効果は病態によって異なります。
また、前述の細菌と抗菌剤の組合せの例と同様に、腫瘍の種類によって抗ガン剤の種類も使い分けます。
やはり適材適所で、重要なのは症例の状況ごとに的確な薬剤や治療を選ぶことですから、治療効果が高いから強い薬剤と決まっているわけではありません。【効果が強力でも、強い副作用は現れにくい薬剤もあります】
薬剤の改良も進んでいます。
例えばステロイド剤は副作用が問題になりがちですが、「アンテドラッグ」に該当する外用ステロイド剤では、「強いステロイド」に該当するにもかかわらず強い副作用が起こる例がほとんど見られません。
「アンテドラッグ」とは、外用薬として皮膚に塗布するとその部位では効果を発揮しますが、皮膚からほとんど吸収しない、もしくは速やかに不活化されるために体内には薬理作用の影響が出ないように設計された薬剤のことです。
このため、アンテドラッグの正しい用法を守っている限り、強い副作用が出ることはほぼありません。
「強い」と言われがちな薬剤でも、強い副作用を伴うとは限らない例もあるのです。




