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  • ○眠くなる薬…?のお話
  • 2026/03/13
  • 「○○薬を飲むと眠くなる」という話を耳にすることは珍しくありません。
     ただし、それらの情報の中には、本当に眠気が起こる薬剤だけでなく、本来は眠くなる成分ではない薬剤まで含められていることがあります。

    【実際に眠くなる・眠くなる可能性がある薬】
     薬剤の性質上、眠くなりやすい薬剤の代表例は以下のとおりです。

    ◼︎睡眠薬・麻酔薬
     これらの薬剤は「眠ること・眠らせること」が本来の目的ですから、投薬して眠くなるのは副作用ではなく、予定どおりの効果ですね。
     正確には、睡眠薬や麻酔薬は「眠くなりやすい」ではなく、しっかりと眠ってしまう効果があり、投薬量によって眠りの「浅い・深い」の調節をします。

    ◼︎抗不安薬
     「抗不安薬」などは鎮静効果(落ち着かせる効果)があり、脳神経の興奮が起こりにくくなります。
     このため、睡眠薬ほどではないですが眠くなる可能性があります。

    ◼︎抗てんかん薬
     てんかんの治療に使用する薬剤は脳神経の興奮を抑える効果があるため、一部の薬剤は上記の抗不安薬と同様に眠くなる可能性があります。

    ◼︎抗ヒスタミン剤
     一般的によく使われる薬剤の中で、眠くなりやすい成分として有名です。
     アレルギーの治療に使われることがある「抗ヒスタミン剤」の一部は眠くなりやすい副作用があります。
     アレルギーが起こると体内でヒスタミンが放出され、このヒスタミンが痒みや腫れなどアレルギー症状の要因になります。
     抗ヒスタミン剤はこのヒスタミンの働きを抑制するので、アレルギー症状を軽減できます。
     一方でヒスタミンは脳神経の興奮などにも関係があるため、抗ヒスタミン剤は脳神経の興奮を抑制する可能性があり、これが「眠くなりやすい」「集中力の低下」の原因と考えられます。
     人間の花粉症の治療には抗ヒスタミン剤が使われることがありますし、総合感冒薬(いわゆる風邪薬)にも抗ヒスタミン剤が含まれていることがあり、「花粉症の薬や風邪薬を飲んだら眠くなりやすい」と言われるのはこのためです。
     これらの薬剤の使用時は、人間では自動車の運転などを避けるように指示されるでしょう。

    【眠くなると誤解されることがある薬剤】
     本来は「眠くなる副作用」は無い、もしくはほとんど無いと考えられる成分ですが、眠くなると誤解される薬剤があります。

    ◼︎鎮痛剤
     いわゆる「痛み止め」のことです。
     鎮痛剤の主成分では、眠くなることはほぼありません。
     動物用の鎮痛剤は、主成分の「痛み止め」だけの薬剤がほとんどで、眠くなる他の成分が含まれていません。
     一方、人間用鎮痛剤のうち、複数の成分が含まれる「合剤」では、鎮静効果の目的で「眠くなる成分」が意図的に配合されていることがあるようです。
     安易な表現で言えば「痛みでイライラするよりは、軽度にボーッとした方が、楽である」という目的で、鎮静効果がある成分を配合しているようです。
     このような人間の薬剤では、自動車の運転などを避けるように指示されるでしょう。

    ◼︎抗菌剤/抗生物質
     基本的に細菌を殺滅・減少させる薬剤であって、脳神経などに作用する成分ではありません。
     つまり、眠くなる作用機序(薬剤の効果や作用が起こるメカニズム)や成分とは関係が無い薬剤なので、大半の抗菌剤・抗生物質では眠くなる事例はほとんどありません。
     例外的に、人間では体質によって一部の抗菌剤で眠くなる事例の報告があるようですが、一般的ではないようです。
     該当する抗菌剤を筆者も服用した経験がありますが、眠気はありませんでした。
     動物ではほぼ問題になりません。

    ◼︎痒み止め
     動物の痒み止めとして使用する薬剤では、眠くなることが問題になる例はほとんど見ません。
     上記の動物用鎮痛剤と同じく、動物用の痒み止めは主成分だけの薬剤なので、眠くなりやすい他の成分が含まれていません。
     ただし、人間用の痒み止めの「合剤」では、前述しました抗ヒスタミン剤などの「眠くなる成分」が配合されていることがあるようです。
     このような人間の薬剤では、自動車の運転などを避けるように指示されるでしょう。

    【それでも、鎮痛剤や痒み止めの投薬でよく眠る動物もいます】
     前述したとおり、鎮痛剤や痒み止めを投薬することで、眠くなる副作用が問題になる症例はあまり見ることはありません。
     特に動物用の鎮痛剤や痒み止めは主成分単独の薬剤(「単剤」と言います)なので、人間の合剤のように眠くなる別の成分が含まれることもありません。
     それにも関わらず、鎮痛剤や痒み止めを投与するとよく眠る動物がいます。
     正確には、「眠くなる」のではなく、「よく眠れる」ようになります。

    【鎮痛剤や痒み止めを投薬すると、痛み・痒みから解放されて熟睡しやすくなります】
     痛み・痒みで悩まされている状態を想像すれば簡単にご理解いただけると思いますが、痛みや痒みが軽減すると、快適に眠りやすくなります。
     痛みや痒みがあると、寝つきが悪かったり、熟睡できなくても不思議ではありません。
     痛みや痒みのために熟睡できなかった日々と比べれば、鎮痛剤・痒み止めを投薬した後は痛み・痒みから解放されてよく眠れるのは当然の結果です。
     同様に、細菌感染によって炎症が起きていた場合は、原因である細菌を抗菌剤で殺滅・減少させれば、炎症に伴う痛み・発熱などが軽減し、楽になって眠りやすくなります。
     これらの薬剤は「眠り薬」ではありませんし、「眠くなる副作用」とも関係無く、「痛み・痒み・発熱などの辛い症状から解放されて、結果的に快適に眠れるようになる現象」と言って良いでしょう。
     よく眠れるということは、症状から解放されて本来の心地良い睡眠を取り戻せたのですから、患者さんにとっては好ましい結果であると言えます。
     鎮痛剤・痒み止め・抗菌剤などの投薬で「眠くなる」という情報の中には、上記の「症状から解放されると快適に眠れる」という当然の結果が理解されず、眠くなる副作用のように誤解された事例が含まれている可能性があります。

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