- ◯自律神経
- 2025/05/30
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【自律神経って何?】
ヒトの平均的な呼吸数は1分間に10〜20回と言われています。
みなさんはこの平均呼吸数を参考に数えながら呼吸しているわけではなく、身体が「勝手に」このペースで呼吸しています。
この呼吸の例のように、本人の意識とは関係なく、生きていくために必要な日々の身体活動を「勝手に」コントロールしてくれているのが「自律神経」です。
自律神経とは、文字どおり「自律」的に身体が活動するための神経で、ヒト自身、動物自身の意思とは無関係に働いています。
自律神経は、「心拍」「呼吸」「消化」「排泄」「体温調節」など、生命を維持するために必要な活動をコントロールするために、一生の間休むこと無く働き続けています。
環境の条件や変化などに対して、身体を最適な状態に保つためにあらゆる臓器の活動をコントロールしているのです。
自律神経の働きは動物でも同じです。
前述の例にあげた平均的呼吸数はイヌで1分間に15〜20回、ネコで20〜40回程度と言われていますが、イヌもネコも意識的に呼吸しているわけではなく、自律神経の働きによって呼吸が行われているということです。
安静時・睡眠時には上記よりも呼吸数は減少しますが、これも自律神経による調節です。
自律神経は「交感神経(こうかんしんけい)」「副交感神経(ふくこうかんしんけい)」の2系統に分けられます。
副交感神経の「副」の文字が影響するのか、『交感神経が主体の神経で、副交感神経がその予備的な神経』であるような誤解があるようですが、それは正確な解釈ではありません。
交感神経と副交感神経は身体のバランスを取るためになくてはならない、「シーソーの対極同士」のような関係であると考えてよいでしょう。参考までに、英語で交感神経は「sympathetic nerve」、副交感神経は「parasympathetic nerve」です。
「nerve」は神経の意味です。
両者に共通の「sympathetic」は「sympathy」の形容詞形で、みなさんが「共感する、同じ気持ちになる」という意味で使われる「シンパシー」と同じ語源です。
様々な臓器などが同調して働くことに作用する神経なので、「sympathetic」という表現が使われたようで、その日本語訳が「交感」だったということです。
交感神経・副交感神経の中枢は脳の「視床下部(ししょうかぶ)」にあります。
【自律神経の働き】
簡単に言えば、交感神経は活動する時に働く神経で、副交感神経は休憩やリラックスする時に働きます。
運動する時には交感神経が優位に働き、心拍数や血圧が上昇します。
安静時には副交感神経が優位に働き、心拍数や血圧は下がります。
自動車の運転に例えれば、交感神経がアクセル、副交感神経がブレーキに相当し、心拍や血圧に限らず、生体の「安全運転」を調節していると言えるでしょう。
1日のうちで交感神経と副交感神経の働きにはリズムがあり、活動中には交感神経が優位、休憩・睡眠中には副交感神経が優位になります。
ヒトのように、基本的に日中活動し夜間に睡眠をとる生物であれば、日中は交感神経が優位、夜間は副交感神経が優位であるということです。
交感神経と副交感神経が交互に優位になって働くことで、規則正しい毎日のリズムが実現され、健康的な生活を維持しています。
この自律神経のリズムやバランスが崩れると、あらゆる臓器の働きに乱れが起こる可能性があります。
環境・生活リズムの変化やストレスは自律神経のバランスを乱します。
ヒトでは「胃腸の働きが悪くなる」「熟睡できない」などの不調が始まり、結果的に深刻な体調不良につながる場合もあるようです。
動物も、規則正しい安定した毎日が好ましいのはヒトと同じです。
食餌や散歩など、動物の生活にとって重要な要件が不規則だと自律神経に悪影響が及ぶかもしれません。自律神経とは別の話ですが、食餌や散歩のように動物が楽しみに期待していることが不規則だと「いつ食べ物がもらえるのか」「いつ散歩に行けるのか」動物は不安になり、飼い主さんへの信頼が損なわれる可能性もあります。
【ストレスと自律神経】
ストレスとは、「生体に有害な影響を及ぼす要因」で、医学的には生体に負担になることなら精神的・肉体的な要因をすべて含みます。
環境の変化や病気、ケガもストレスということです。
一般的にストレスを感じると自律神経のうち、交感神経が優位になります。
ストレスによる不安や恐怖、緊張などは大脳で発生し、自律神経の中枢である視床下部へ伝わります。
さらに視床下部から交感神経へ刺激が伝わり、交感神経が優位になります。
交感神経が優位になると、「胃腸の活動が低下」「心拍数増加」「脳や全身の血管が収縮」「血圧の上昇」などの状態になり、胃腸障害や血流変化などの影響が様々な現象・症状として現れる恐れがあります。
【自律神経を安定させるために】
ヒトも動物も規則正しい毎日が好ましく、自律神経の安定が健康に寄与すると期待できます。
動物は時計を読み取るわけではありませんが、「体内時計」や「概日リズム」などと呼ばれる生体内のリズムがあり、かなり正確な時間の感覚を持っていると言われています。
起床、就寝、食餌、散歩などの時間や生活リズムが毎日安定していることが健康的な生活の基本になります。
一方で、飼い主さんは仕事や学校などがある日と休日とで生活のリズムが変わることもあり得ると思われます。
動物の食餌や散歩などは、飼い主さんの出勤日・通学日でも休日でも、大きく影響を受けない時間帯に設定した方が良いでしょう。
ただし、動物の生活リズムを重視するために飼い主さんの生活が窮屈になってしまうようなら、今度はそれが飼い主さん自身のストレスになりかねませんから、「だいたい同じ時間帯」程度の目標でかまいません。
動物も飼い主さんも、ほどほどに快適な生活が継続できるバランスを目指しましょう。
他の身近な要素では、気温の変化が影響するかもしれません。
極端な気温の変化は自律神経に悪影響が現れる恐れがあり、具体的には1日の間に10℃以上の寒暖差があると、体調に変化が見られる可能性があると言われています。
もちろん、心臓疾患などでは極端な温度変化は避けるべきです。