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  • ネコの問題行動(その1):攻撃行動について
  • 2026/03/02
  •  「問題行動」とは、ネコと飼い主さん・ご家族が生活する上で、不都合なネコの行動のことを言います。
     ネコにとって特別な行動でなくても、ご家族には問題になるケースもあります。
     ネコもイヌも野生動物ではないので、家庭動物として人間と協調した生活習慣が求められるのが現実です。
     この記事では、ネコの問題行動を分析することで、ネコと飼い主さんが過ごしやすい日々を実現する一助になることを願い、情報提供しております。
     なお、以下に記述される情報は一般平均的なネコの特徴であって、全てのネコに当てはまるとは限りません。
     それぞれのネコには個性があり、性質・性格が個々で異なることを考慮の上で参考にしてください。

    【ネコの攻撃行動が問題になる理由】
     現在はネコを室内飼育するのが一般的です。
     ネコとご家族が生活空間を共有し、接触する機会が多いので、攻撃などネコの問題行動はご家族の生活の質に大きく影響してしまいます。
     ネコは身体能力・攻撃能力が高く、本気で攻撃すると、ご家族や関係者が負傷する事例が珍しくありません。
     飼い主さんが深刻なケガを負った例もあります。
     ネコの攻撃行動が原因で飼育放棄された例もあるようです。
     また、ネコから感染を受ける感染症も、ご家族にとっては問題になります。
     ネコの攻撃行動をコントロールすることは、ネコとご家族の双方に意義があります。

    【そもそもの話:ネコが攻撃行動を起こしやすい理由】
    ①ネコは社会性が高くない動物です
     人間や他の動物・環境に適応し、関係性を構築する性質を「社会性」と言います。
     社会性を得るための経験の積み重ねや学習過程などを「社会化」と言います。
     ネコは本来単独行動の性質が強く、イヌと比較すると社会性が高いとは言えない動物です。(※)
     このため、人間や他の動物との密接な関係性を持つための社会化について、イヌと比べるとネコは得意であるとは言えないのです。
     また、群れで生活する動物に比べて、ネコの社会化期(社会化に適した時期)は短いことも知られています。
    (※) 社会性が高い・低いは優劣ではなく、知能の問題でも無く、「単独行動の習性の動物」か「群れで生活する習性の動物」であるかが影響します。
     イヌはもともと群れで生活する習性なので、社会性が高い動物です。
     もちろんネコも社会化できる能力はありますが、群れで生活する習性であるイヌの方が社会化しやすいという意味です。

    ②ネコは警戒心が強い動物です
     ネコの祖先が「リビアヤマネコ」であることは定説なのでご存じの方も多いと思われますが、現在のネコたちにはリビアヤマネコの性質がまだ残っています。
     自分の身を守る「自己防衛」についてこだわりがあり、警戒心が強い傾向が見られます。
     自分の安心・安全に対する意識が高いと言えるでしょう。

    ③ネコは環境の変化を嫌う傾向があります
     一般的にネコはイヌに比べて、好奇心が低い動物であると言われています。
     新しいものに対して、どちらかと言うと不安を感じる可能性があります。
     これはネコの生活環境全般に当てはまり、例えば人間のお客さんに対してだけでなく、新しい家具などにも不安や恐怖を感じることがあり得ます。
     ネコは生活の変化を嫌い、安定した毎日の繰り返しの方が居心地良く感じる傾向があります。
     この安定した生活が乱されると不安やストレスを感じる可能性が高くなるのです。
     当然、転居はネコにとって相当強い不安を与えることを理解しておく必要があります。

    【ネコの攻撃行動のタイプ】
    ①不安や恐怖による攻撃行動
     不安や恐怖を感じた場合の攻撃行動です。
     前述のとおりネコは本来単独行動の性質が強く、社会性が高くないため、人間や他の動物との関係に適応するのが苦手な場合があります。
     また、警戒心が強いため、自分の安全・安心の維持を重視する傾向があります。
     このため、人間には些細なことでも、ネコは不安や不満、恐怖を感じる機会が多いと予想され、自己防衛のための攻撃行動などが起こりやすくなると考えられます。

    ②自己主張による攻撃行動
     単独行動の性質が強いため、ネコは自分の欲求をそのまま行動に反映する傾向があります。
     人間や他の動物に合わせるよりは、自分の好きなように行動したい、ということです。
     逆に、自分の意に沿わず強要されると強い不満を感じ、相手に対して攻撃行動を起こす可能性があります。
     攻撃によって相手が引き下がることを経験すると、攻撃行動が「自己主張を実現する方法」として有効であると学習し、その後はさらに攻撃行動が過剰になる可能性があります。

    ③遊びによる興奮がきっかけの攻撃行動
     ネコは本来「捕食動物」で、獲物になる小型動物を捕獲する欲求を持っています。
     例えば「ネコじゃらし」などで遊ばせる時に、対象物を捕まえたり噛んだりするのは捕獲行動の疑似体験と考えられます。
     捕獲行動の練習として、子ネコ同士は遊びながら捕獲のための身動きを覚えますが、興奮がエスカレートすると、相手に負傷させる場合があります。
     飼い主さんがネコじゃらしで遊ばせる場合でも、興奮が過剰になると飼い主さんに対しての攻撃行動が見られる恐れがあります。

    ④攻撃行動の転嫁
     他の対象への攻撃的な感情が、元々は無関係だった周囲の人間や動物に及ぶことです。
     ネコ同士のケンカの途中で、側にいた人間まで攻撃される場合がありますが、これが代表的な例です。
     また、ネコが驚くような突然の騒音や振動によって攻撃行動が起こるのも、このケースに当てはまります。

    ⑤愛撫に誘発される攻撃行動
     人間がネコを撫でることによって起こる攻撃行動です。
     人間が優しく撫でていても、途中からネコが不快感を示す場合があり、それでも撫で続けることで、攻撃行動に転じることがあります。
     最初はネコが自分から撫でられることを要求して人間に接触してきた場合でも、結果的に攻撃行動が起こることがあります。
     理由は解明されていませんが、ネコは身体の束縛を嫌うため、長時間撫でられることを「強要された束縛である」と感じるのかもしれません。
     また、ネコ同士が相手をグルーミング(毛づくろい)する際の、ネコが舌で舐めるストロークやリズムと、人間の撫で方が異なるため、それが不快なのではないかという見解もあります。
     ネコが不快感を表現し始めても、撫でている人間がそれに気付かないと攻撃行動が起きやすいと考えられます。(※)
     (※)ネコの不安やストレスを示す「ストレスサイン」は後述します。

    ⑥縄張りを主張する攻撃行動
     現代の室内飼育ネコは人間と生活空間を共有しているため、縄張り(自分のテリトリー)の範囲が不明瞭である場合が多いものの、本来ネコは縄張りを重要視する動物です。
     このため、ネコが自分の縄張りと認識している範囲に人間や他の動物が侵入することを嫌うことは不思議ではありません。
     その範囲に入った人間や動物をネコが攻撃する可能性はあります。
     縄張りの範囲については、人間の感覚では境界がわかりにくいケースもあるようです。

    ⑦同種の動物(すなわちネコ)に対して特化した攻撃行動
     同居ネコに限らず、窓越しに見える屋外のネコに対しても、ネコを対象とした攻撃行動が見られることがあります。
     対象は同種の動物であるネコに特化され、人間に対しての攻撃がほとんど見られないケースです。
     例えば動物病院から連れて帰ってきたネコに対して、自宅待機していた同居のネコが攻撃的に振る舞うことはしばしば見られる事例です。
     ネコはにおいに敏感なので、おそらく動物病院のにおいを身につけて帰ったネコに対して不安・不快感があると想像されますが、同じにおいをつけて帰ってきた飼い主さんに攻撃的ではない場合は、ネコに特化した攻撃行動に該当すると考えられます。
     つまり、攻撃的な感情になる動機は動物病院のにおいかもしれませんが、攻撃対象はあくまでネコなのです。
     同様に、縄張りを主張する例においても、飼い主さんには攻撃せず、同居ネコに対してのみ攻撃が見られるケースもこのタイプの攻撃行動に該当すると思われます。
     動機は様々で、上記①〜⑥とも関連しますが、行動対象は同種の動物であるネコに限定される攻撃行動です。

    【問題となるネコの攻撃行動が見られた場合に考慮すべきこと】
    ◉攻撃行動は病気や負傷が原因である場合もあります◉
     病気や負傷などで「痛み」や「不快感」などを感じると、気持ちが落ち着かないのは、ネコも人間と同じです。
     痛み・体調不良によって、自分のコンディションが万全でないことを自覚すると、身をを守る意識は高くなります。
     結果的に自己防衛のための攻撃性が高くなっている可能性は考慮しなければいけません。
     理由がわからないネコの攻撃行動は、病気などが原因である場合がしばしば見られます。
     特にネコは痛みを隠す傾向があるため、外観からは痛みがあること自体がわかりにくいこともあります。
     このため、攻撃行動の原因を不安やストレスと決めつける前に、身体の検査などを実施して病気や負傷の有無を調べる必要があります。
     また、甲状腺機能亢進症(甲状腺ホルモンが多過ぎる病気)では、ネコがイライラするようになり、攻撃行動が起こりやすくなります。
     この場合は痛みとは関係ありませんが、病気による攻撃行動のひとつです。
     これらの診断は動物病院での受診や検査が必要です。

    ◉攻撃行動のきっかけについて、飼い主さんの心当たりが無ければ治療対象になる場合もあります◉
     前述の「ネコの攻撃行動のパターン」に当てはまる事項があり、その対応が可能であれば対策を検討することになります。
     一方、飼い主さんには原因がわからない場合、上記のとおり病気や負傷をチェックする必要があります。
     それでも原因不明の場合は攻撃行動をコントロールするための薬剤治療などが提案されることがあります。
     使用可能な薬剤の種類やネコの状況によっては、短期間では効果が期待できない場合があり、治療が長期に及ぶケースもあります。

    【ネコが発する「ストレスサイン」を理解しましょう】
    ⑴下記の状態はネコが不安やストレスを感じている場合によく見られる仕草・行動です。
     このような状態のネコを不用意に刺激するのは避けましょう。
     攻撃行動につながる恐れがあります。
     なお、ネコの健康状態に問題が無いことが前提です。
    ◾️明るい場所であるのに瞳孔が開いて興奮している、または暗い場所なのに瞳孔が細く、緊張した様子(通常は明るい場所で瞳孔は細くなり、暗い場所では瞳孔は開きます)
    ◾️耳(耳介)を横や後ろへ倒す
    ◾️しっぽをパタパタ振る(注:イヌが喜んでしっぽを振るのと同じではありません)
    ◾️胴体の皮膚がピクピクと小刻みに動く
    ◾️人間が眉間にシワを寄せるような、険しい目つき
    ◾️目を細める、視線を合わさない

    ⑵さらに以下の状態は攻撃行動の前段階とも言え、その後攻撃が始まる可能性があるので、刺激しないように注意しなければいけません。
    ◾️逃げる、隠れるなど、距離をおこうとする
    ◾️「シャーッ」と威嚇の声を出す、唸る
    ◾️全く喜ぶはずがない状況で、ゴロゴロと喉(のど)を鳴らす(注:ネコが喉を鳴らすのは全て機嫌が良いサインだと誤解されていることがあります)

    ⑶次のような行動は、攻撃的な感情がかなり高まっており、もはや攻撃行動の始まりとみなした方がいいでしょう。
    ◾️身体の被毛を逆立てる(特に背中やしっぽの被毛)
    ◾️相手を凝視し、動きが止まる(いわゆるフリーズ状態)
    ◾️攻撃は相手に届いていなくても、前あしで叩く・引っ掻く行動
    ◾️相手を追いかける

    【個々のネコの攻撃パターンを理解し、攻撃行動に至るのを防ぐことが重要です】
     何が刺激になって攻撃行動に至るのか、ネコを観察しましょう。
     ネコの攻撃行動につながる動機や刺激を回避することができれば、攻撃行動は減少するはずです。
     逆に、攻撃を誘発する刺激を繰り返し経験すると、ネコは攻撃行動の条件づけが強化され、さらに次の攻撃行動が起こりやすくなる傾向があります。
     また、エスカレートした例では、攻撃行動の元々の原因と関連づけしてしまった別の事象に対しても、ネコの攻撃的な感情が生じやすくなると考えられます。
     例えば、ネコが警戒しているお客さんが毎回インターホンを鳴らしてからネコのテリトリーに入ってくると、お客さんに対してだけでなく、その予告であるインターホンの音だけで、攻撃的な感情が始まってしまうようなケースです。
     攻撃行動のきっかけが不明でも、ネコのストレスサインや攻撃の前兆行動の段階で飼い主さんが気づくことができると、攻撃行動を回避できる可能性もあります。
     攻撃行動のコントロールは、一朝一夕では達成できない場合がほとんどですから、結果を急がず粘り強く取り組むことが大切です。

    ◾️薬剤療法について
     ネコの問題行動のキッカケとなる不安やストレスの原因がわからない、もしくは原因を除去できない・完全な対策ができないなどの事例では、薬剤による治療を実施することがあります。
     特に問題行動が重度で、飼い主さん・ご家族の生活に深刻な支障が起きている場合には薬剤療法が選択される場合がありますが、薬剤療法はあくまで補助的な対策であることをご理解いただく必要があります。
     対策の基本はネコの不安やストレスを排除することです。
     また、問題行動の治療に使用する薬剤によっては、結果が出るのに数週間程度の時間が必要な場合があります。
     薬剤の効果が発揮されるには、並行して実施されるネコのストレス対策などがうまく機能しているかどうかも影響します。
     使用可能な薬剤の種類は症例によって異なる場合があり、ネコのストレスの条件なども個々で異なるので、全ての例が期待どおりに速やかに解決するわけではないことをご理解ください。
     また、ネコの不安を和らげるフェロモン製剤を併用するケースもあります。

    ◾️◾️◾️ネコの問題行動についてお困りの場合も、動物病院にご相談ください◾️◾️◾️

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