- ネコの問題行動(その3):不適切な排泄行動について
- 2026/03/24
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「問題行動」とは、ネコと飼い主さん・ご家族が生活する上で、不都合なネコの行動のことを言います。
ネコにとって特別な行動ではなくても、ご家族には問題になるケースもあります。
ネコもイヌも野生動物ではないので、家庭動物として人間と協調した生活習慣が求められるのが現実です。
この記事では、ネコの問題行動を分析することで、ネコと飼い主さんが過ごしやすい日々を実現する一助になることを願い、情報提供しております。
なお、以下に記述される情報は一般平均的なネコの特徴であって、全てのネコに当てはまるとは限りません。
それぞれのネコには個性があり、性質・性格が個々で異なることを考慮の上で参考にしてください。【ネコの不適切な排泄が問題になる理由】
現在はネコを室内飼育するのが一般的です。
もともと、ネコは決まった場所(トイレ)で排泄する性質があり、これがネコを室内で飼育できる重要な条件になっています。
ネコとご家族が生活空間を共有しているため、ネコがトイレ以外の場所で排泄するようになると、ご家族の生活の質を損なってしまいます。
衛生面でも問題が発生する恐れがあります。【不適切な排泄の分類】
①病気など身体の問題が原因トイレ以外の場所で不適切な排尿や排便が起こりやすい病気は以下のとおりです。
● 不適切な場所での排尿
尿路疾患(膀胱炎など)、腎疾患、内分泌疾患(糖尿病、甲状腺機能亢進症など)、関節疾患(関節炎など)
● 不適切な場所での排便
消化器疾患(腸炎など)、関節疾患(関節炎など)
⦅解説⦆
■ 膀胱炎が起きていると、残尿感があったり、多量の尿を膀胱に溜めるのが不快になりやすくなります。
結果的に頻繁に排尿する「頻尿」が起こり、それでも不快感が続くと、「トイレ以外の別の場所で排尿すればスッキリするかもしれない」とネコは発想するようです。
また、尿意が頻繁でトイレへの移動が間に合わないことも考えられます。
これらはネコだけでなくイヌの膀胱炎でも見られる症状です。
膀胱炎が原因で起こる不適切な場所での排尿はよく見られる症状ですから、ストレスなどを疑う前にまず尿検査を実施するべきです。
■ 腎疾患や糖尿病、甲状腺機能亢進症など、「多飲・多尿」(多量の水を飲み、多量の尿を排出する症状)が起こる病気では、排尿量・排尿回数ともに増えるため、すでに尿で汚れたトイレを嫌ってトイレ以外の場所で排尿することがあります。
尿の貯留ペースが早過ぎてトイレへの移動が間に合わないこともあるかもしれません。
■ 腸炎では頻回の排便が起こることがあり、急な便意があるとトイレへの移動が間に合わないことがあるかもしれません。
■ 関節疾患があるネコは、四肢などに痛みを感じるとトイレへの移動やトイレの出入りが辛いため、手近な場所で排尿・排便をしてしまうことがあります。
特にネコは痛みがあっても隠す傾向があるため、明確な跛行(はこう=足をかばって歩くこと)などが見られなくても、関節疾患が無いとは言えません。
②トイレ自体・トイレの場所の問題ネコは清潔で安心できるトイレを好みます。
前述にもありましたように、トイレが使用済みで、自分の排泄物であっても汚れた状態だと、それを嫌ってトイレ以外の場所で排泄することがあります。
健康なネコは、1日に2回以上の排尿、排便は1日に1回は見られるのが一般的です。
つまり、ネコを単独で飼育していてもトイレを使う回数は1日に複数回であることが多く、2回目以降の排泄時に前回の汚れが残っていると不快に感じる可能性はあります。
また、排尿と別の場所で排便することを好むネコも珍しくありません。
さらに、トイレの設置場所がご家族や他の動物の動線と重なると落ち着いて排泄できず、別の場所で排泄するきっかけになることもあります。
◉ ネコにとって好ましいトイレの原則は「清潔」「安心」「安定」です ◉
■ 清潔なトイレ→単独飼育のネコでもトイレが2ヶ所あると、その日2回目の排泄でも清潔なトイレが使えます。
■ 安心できるトイレ→ご家族や他の動物、お客さんなどの行動が影響しない場所が、落ち着いて排泄しやすいでしょう。
■ 安定して使えるトイレ→排泄したい時に使えないトイレは不便です。
尿意・便意を感じたらすぐに使える場所にトイレを設置するのが良いでしょう。
ドアが閉まっていると使えないような場所にトイレがあるのは不都合です。
■ 上記以外に、「トイレの大きさがネコの体格に適しているか」「ネコ砂が、ネコの好みに合っているか」などの条件が排泄行動に影響することもあります。
③マーキングネコが自分の縄張り(テリトリー)を主張するために、その範囲内の要所に排泄する行動です。
自分の存在を知らせたい、という欲求が根本にあるため、一種のコミュニケーション行動とも考えることができます。
多くの場合は排尿によるマーキングで、排便がマーキングに利用されることはあるかもしれませんが少ないと考えられます。
マーキングの排尿は、「通常の排尿と比べて少量」「壁などの決まった場所」「立った姿勢のまま尿を吹きつける(いわゆる『スプレー』行動)」などが特徴的ですが、床やベッド、衣類などに排尿する場合もあります。
また、立った姿勢ではなく、通常の排尿姿勢の例もあります。
マーキングには、繁殖行動に関連する「性的マーキング」と、不安に関連する「ストレスによるマーキング」があります。
■ 性的マーキングは、去勢・不妊手術を受けていないネコが、性成熟を迎えることで始まります。
子孫を残すため、健康な異性に自分の存在や交配可能であることをアピールする行動です。
このため、性的マーキングは雌雄共に見られます。
尿のにおいなどから異性への情報が伝わると考えられます。
⦅対策⦆
性的マーキングは、去勢・不妊手術を実施することで、約90%以上の例で改善が見られると言われており、最も有効な対策です。
■ ストレスによるマーキングは、不安な状況を解消するために周囲に自分のにおいを残す行動です。
例えば転居や新しい家具の導入などで生活の環境が変化すると、マーキングが増えることがあります。
また、人間のご家族や他の動物が増えると、自分のテリトリーを脅かされる不安を感じ、マーキング行動が誘発される場合もあります。
⦅対策⦆
まず、ネコが不安・ストレスを感じる原因を確認する必要があります。
マーキングが始まった時期と一致する環境の変化や問題が明確で、改善可能な条件ならその対策を実施します。
原因が突き止められない場合は、ネコの生活環境全体の改善に努めることで、ストレスを軽減できる可能性もあります。
マーキングをする場所が決まっていれば、ネコがそこに行けないようにすることが必要かもしれません。
また、マーキング場所で給餌することで、その場所に対する意識を変えることができる可能性もあります。
上記の対策が無効、もしくは実施困難であると、薬剤による治療対象に該当するケースかもしれません。
ただし、個々のネコの条件と、使用する薬剤の種類との組み合わせはケースによって違い、効果が現れるまで一定の時間が必要な例もあります。
薬剤の効果が発揮されるためには、並行して実施されるネコのストレス対策などがうまく機能しているかどうかも影響します。
ネコに安心感を与えるフェロモン製剤もありますが、使い方を理解していないと、無効な場合も考えられます。
薬剤・フェロモン製剤ともに、適用には動物病院での診察が必要です。
■ ■ ■ ネコの問題行動についてお困りの場合も、動物病院にご相談ください ■ ■ ■




