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  • ○抗菌剤は使わない方がいいの?
  • 2026/04/07
  • ●抗菌剤が必要な症例では投与しますが、「薬剤耐性菌」が出現するのを防ぐため、抗菌剤の必要性が高くない症例には使用を控えることになっています。
    [以下、この記事中の「抗菌剤」は抗生物質・合成抗菌剤などの総称とします]
     「抗菌剤を使わない方がいい」というのは、いわゆる切り取り情報です。
     最も大切な主旨が欠けています。

    【抗菌剤が効かない「薬剤耐性菌」を増やさないことが最も重要です】
     「抗菌剤はできるだけ使用しない方がいい」という情報について、その根拠や背景が誤解されているケースが見られます。
     本来の主旨は、「抗菌剤が効かない薬剤耐性菌を発生させないこと」が最大の目的です。
     「必要がない状況で抗菌剤を長期または間欠的に継続投与すると、薬剤耐性菌が現れる恐れがあるので、無計画な使用は避けなければならない」というのが正確な説明になります。
     抗菌剤を必要とする症例は間違いなくあり、抗菌剤で治療しなければ死に至る症例もあります。
     その場合は迷わず抗菌剤を使用せざるを得ません。
     ところが、いざという時に抗菌剤が効かないと有効な治療ができず、生命の危険もあり得るので、薬が効かない薬剤耐性菌を増やしたくないのです。
     このため、2015年5月の世界保健総会で「薬剤耐性(AMR)に関するグローバル・アクション・プラン」が採択されました。
     この世界的指針に従い、日本の厚生労働省 が示した「薬剤耐性(AMR)対策アクションプラン」に基づく啓蒙や対策が、現在行われているのです。
     おそらく、この啓蒙の文言の一部だけを切り取って拡散されたのが「抗菌剤は使わない方がいい」という誤情報だと思われます。
     ※WHO(世界保健機関)の最高意思決定機関を世界保健総会(WHO総会)といいます。
      AMR とは Antimicrobial Resistance の略で、抗菌耐性を意味します。

    【耐性菌とは?】
     長期間にわたって抗菌剤を投与すると、その薬剤が効く細菌は減りますが、薬剤に抵抗力を持った「薬が効かない菌」は生き残る可能性があります。
     これを「薬剤耐性菌」といいます。(以下、耐性菌と表記します)
     長期連続投与ではなくても、薬剤を無計画に間欠投与(投与・休薬を繰り返す)などでも、耐性菌が現れることがあり得ます。
     様々な薬剤で同様の投与を繰り返した結果、多種類の薬剤が効かない危険な菌が生き残る恐れがあるのです。
     これが多剤耐性菌です。
     製薬会社が新しい抗菌剤を開発するのに何年もかかる一方で、新しい抗菌剤に対する耐性菌は数ヶ月以内に現れることがあります。
     この状況がすでに現実となっており、多剤耐性菌は世界的な重要課題になっています。
     現代の医療・獣医療で最も難しい課題のひとつになっていると言えるでしょう。
     多剤耐性菌が感染すると、有効な治療法が無い(効く薬剤が無い)ために病状の悪化率が高くなり、最終的に死亡率も高くなります。
     このため、前述の「薬剤耐性(AMR)に関するグローバル・アクション・プラン」が世界保健総会で採択されたのです。
     近い将来、人間の死亡原因は、悪性腫瘍(いわゆる「がん」)よりも耐性菌感染が上回ると推測されています。
     耐性菌についての対策を早急に実施しなければ、2050年には耐性菌感染が原因の死者数が、全世界で1,000万人を超えると推定され、現在の悪性腫瘍による死者数を上回ります。
     なお、薬剤耐性菌問題については厚生労働省も情報を公開していますので、そちらも参考にされると良いでしょう。

    【耐性菌に関する誤解・誤情報】
     一方で、「必要がない状況で抗菌剤を長期継続投与すると、耐性菌が現れる恐れがあるので、無計画な使用は避けなければならない」という本来の主旨を知らない人もいます。

     「必要がない状況で」と「長期継続投与すると、耐性菌が現れる恐れがあるので、無計画な使用は」の部分が削り落とされて「抗菌剤を避けなければならない」だけが拡散しているようです。
     いわゆる情報の切り取りです。
     しかも、あろうことか「耐性菌が現れるのを防ぐ」という、本来の主旨であり最も重要な情報が全て切り捨てられていますから、多くの人が間違った解釈を作ってしまいます。
     特に、前述のWHO(世界保健機関)の指針などを知らず、耐性菌についての知識も無ければ、その人が持っている知識の範囲で理解しようとしますから、耐性菌問題とはかけ離れた解釈が生まれます。
     「身体に副作用が起こるから」など、その人が知っている言葉を並べて真実ではない理由を作ってしまうケースも多く、耐性菌問題からかけ離れた誤情報が拡散しやすいのです。
     耐性菌問題を啓蒙する重要で真剣な情報すらこのように切り取られてしまう状況ですから、正確な情報が一般に伝わりにくい危機的な時代なのかもしれません。

    【まとめ】
    ◾️耐性菌感染による治療困難な重症例や死亡例を防ぐために、耐性菌発現を防ぐ必要がある。
    ◾️耐性菌が現れるのを防ぐために、不必要な抗菌剤の投与を避ける。
    ◾️抗菌剤治療の必要性が高い症例に抗菌剤を投与することは間違いではない。

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