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  • 「感染症」と「伝染病」の違いは何ですか?
  • 2025/11/11
  • 「感染症」と「伝染病」の違いは何ですか?

    「感染症」は病原体が人間や動物の生体に侵入する「感染」によって起こる疾患全てを指します。「伝染病」は感染症のうち、人間同士・動物同士などで病原体のやりとりが成立・感染し、同様の病気が起こる疾患を意味します。

    【感染症とは】
     かつて「感染症」は「『細菌などの微生物』が生体内に侵入することによって起こる疾患」とされてきました。
     しかし、近年「ウイルス」や「プリオン」などの生物とは言えない病原体による疾患が認知されるようになったため、最近はこれらを包括して「『病原体』が生体内に侵入したことによって起こる疾患」という解釈になっています。
     このため、病原体が寄生虫の場合でも「寄生」ではなく「感染」という表現を使うことがあります。
     「感染者」とは、症状が始まっているかどうかに関係無く病原体の感染を受けた者を指します。
     感染者のうち、すでに症状が始まっている(発症している)場合は「患者」と呼ばれます。
     また、病原体の感染者の中には明確な症状が現れない場合があり、このような例を「不顕性感染(ふけんせいかんせん)」と呼びます。
     不顕性感染者は明確な症状が無いため、本人は感染の自覚が無く、周囲から見ても感染者であることがわからないので、感染経路がわからないまま周囲への感染が拡大する事例もあります。

    【感染が成立する要件】
     感染もしくは感染症が成立する要件として、「感染源(病原体)」「感受性宿主」「感染経路」が揃って存在している必要があります。

    ①感染源(病原体)
     当然ですが、病原体が存在しなければ感染症は起こりません。
     多くの病原体は極めて微細な大きさであるため、肉眼では見えません。
     さらに、病原体となる細菌などは身の回りに普段から存在しており、いつ接触するかわからないため、常に感染の可能性があると理解しておかなければいけません。
     外出すれば新規の病原体と接触する可能性があり、感染が起こる恐れがあります。
     外出の後、帰宅した際に手洗いやうがいが推奨されているのはこのためです。
     動物はその習性上、様々な物のにおいを嗅いだり舐めたりしますから、病原体との接触、すなわち感染の機会は多いと考えるべきでしょう。
     また、特殊な病原体は特定の条件下のみに存在する場合もありますが、病原体についてある程度の知識が無ければ対応は難しく、知らず知らずのうちに病原体と接触している可能性があるのが現実です。

    ②感受性宿主
     感染を受ける人間や動物を「宿主」と呼び、特定の病原体の感染・発症の可能性がある宿主を「感受性宿主」と呼びます。
     例えば「猫エイズウイルス(猫免疫不全ウイルス)」は猫科動物に感染しますが、犬科動物や人間は感染しません。
     この場合、猫科動物が猫エイズウイルスの「感受性宿主」に該当し、犬科動物や人間は猫エイズウイルスに「感受性」は無く、「宿主」にもなりません。
     また、犬ジステンパーは死亡率が高く極めて危険な感染症ですが、予防ワクチンを受けていると高い確率で予防可能です。
     このような感染症ではワクチン接種を受けることで、本来「感受性宿主」であっても「感受性」を有意に低下させる、すなわち感染・発症を防ぐことが可能になります。

    ③感染経路
     感染経路は「感染源(病原体)がどのような道筋・経路で感受性宿主に接触するのか」という感染成立までの経緯です。
     西宮市内でも発生が確認され昨今問題になっている「重症熱性血小板減少症候群(SFTS) 」は、主にSFTSウイルスを持っているマダニに吸血される際に感染しますから、マダニの寄生が感染経路ということになります。
     ただしSFTSウイルスは、すでに感染した人間や動物から、別の人間や動物に直接感染することが判明していますので、マダニだけが感染経路とは言えなくなっています。

     

    【伝染病とは】
     前述のSFTSのようなマダニの介在などが無く、宿主間で直接病原体の感染が成立する感染症を「伝染病」と呼ぶことがあります。
     感染経路として、人間同士・動物同士など「同種の生物(宿主)」同士で病原体のやりとりが成立し、同じ病気が発症するということです。
     飛沫感染や接触感染・間接接触感染に限らず、人間同士・動物同士で「うつる病気」であれば伝染病と言えるでしょう。
     ただし、最近は宿主同士で感染する病気でも伝染病という言葉は使わずに、感染症と呼ぶことが増えているようです。

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