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  • 消毒剤を使えばすべての菌が死滅しますか?
  • 2025/06/11
  • 消毒剤を使えばすべての菌が死滅しますか?

    いいえ。消毒剤ではすべての菌が死滅することは期待できません。

     私たちの身の回りには、細菌などの微生物が常に存在しています。
     一般的な細菌の大きさは1〜10μm(マイクロメートル)( = 1 μmは1000分の1ミリメートル)、ウイルスはさらに小さく1〜10nm(ナノメートル)( = 1 nm は1000分の1マイクロメートル)です。
     細菌やウイルスなどは目の前に存在していても肉眼では見えない大きさです。
     見た目に綺麗な状態でも、細菌などの微生物が多数存在しているのが現実です。
     微生物対策として、殺滅もしくは減少させる処置はいくつかありますが、消毒剤ではすべての菌が死滅するとは言えません。
     インターネット情報などで、消毒剤や洗浄剤などの説明に「滅菌」という表現がある場合は、そのほとんどが「滅菌」や「消毒」などの正確な定義を知らない方による誤りでしょう。
     微生物対策の方法や定義は以下のとおりです。

    【滅菌(めっきん)】
     日本薬局方で厳密に定義されており、「(病原性の有無を問わず)微生物が存在する確率を100万分の1以下にすること」です。
     最も強力に細菌などの微生物を殺滅することを意味し、事実上無菌にすることを目的としていると考えて良いでしょう。
     当然のことですが、手術器具や手術衣(手術ガウン)、手術手袋などは滅菌されています。
     滅菌方法として「高圧蒸気滅菌」「火炎滅菌」「ガス滅菌」「放射線滅菌」などがありますが、いずれの方法もヒトや動物を含めた生体には使用できません。
     また、どの滅菌方法も専用の器具・資材が必要で、一般家庭で滅菌作業はできません。
     例えば高圧蒸気滅菌はオートクレーブという機械を使用して、一般的な条件では121℃20分で滅菌します。
     これは水の沸騰温度である100℃では死滅しない微生物が存在するからです。
     ガス滅菌では滅菌後にガスを除去しますので、滅菌済みの器具などはもちろん安全ですが、滅菌ガスそのものは吸い込むと生体に有害です。
     その他の滅菌方法も含めて、直接生体に施すには耐えられない条件であるため、ヒトや動物を含めた生物を生きた状態で「滅菌」すなわち無菌状態にすることは不可能です。
     消毒剤などでは「消毒」や「殺菌」はできても「滅菌」はできません。

    【殺菌】
     文字どおり細菌などの微生物を殺滅することです。
     ただし、殺菌という言葉には対象になる微生物の種類や量について明確な定義がありません。
     例えば細菌の一部でも殺滅することができれば、大部分の菌が生き残っていても「殺菌効果あり」と言える場合があるため、有効性が保証されているわけではないと言えます。
     この点が一般的に誤解されやすく、殺菌作業の後は無菌状態になっている様な思い込みが多いようですが、それは誤りです。
     なお、「殺菌」は薬事法で定められた医薬品または医薬部外品のみに使用できる表現で、その他のもの、例えば医薬部外品ではない洗剤などに菌の殺滅効果が多少あったとしても「殺菌」という表現はできません。

    【消毒】
     感染を防ぐために病原微生物を殺滅、不活化、除去などの処置を行なうことです。
     目的はあくまで感染防止です。
     細菌などを全滅させることができれば理想的ですが、現実には「病原微生物が死滅していなくても感染しない状態に制御できればよい」という処置を意味します。
     したがって、すべての細菌や微生物がいなくなるとは期待できません。
     どの菌やウイルスをターゲットとしているのか、消毒剤などはその種類ごとの特徴を考慮したうえで、使い分ける必要があります。
     「消毒」も「殺菌」と同様に、薬事法で定められた医薬品または医薬部外品にのみ使用できる表現です。

    【除菌】
     細菌の数を減らすことを意味しますが、明確な条件や定義がありません。
     このため、ただの手洗いや拭き掃除でも菌数が減れば「除菌」と言えることになります。
     「殺菌」「消毒」は薬事法で定められた医薬品・医薬部外品にのみ使用が許されている言葉なので、これらの言葉が使えない洗剤や漂白剤などは「除菌」という表現になる場合があるでしょう。

    【抗菌】
     細菌の繁殖を抑制することです。
     「殺菌」ではありませんし、細菌が減少するわけでもなく、ただ増殖しにくくすることです。
     明確な条件・定義はありません。
     よく混同されますが、医薬品の「抗菌剤」とは全く別の言葉です。

    【まとめ】
     細菌などを殺滅もしくは減らす効果は「滅菌」が最も強力で信頼度が高く、「殺菌」「消毒」「除菌」の順に下がって行きます。
     前述しましたが、消毒剤などでは「滅菌」はできません。
     なお、滅菌作業が完了した物品でもそのまま放置しておくと、ほどなく細菌などの微生物に汚染されます。
     滅菌状態が永遠に続くわけではなく、その後の保管・管理方法が重要で、その点でも一般家庭で「滅菌」を実現することは困難です。
     「抗菌」については細菌などの増殖を抑制するだけで、殺滅、すなわち菌数を短時間で減らすものではないですから、「滅菌」「殺菌」「消毒」などとは別分野の対処法と理解するべきです。

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