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  • イヌやネコにもビタミンCは必要?
  • 2025/05/09
  • イヌやネコにもビタミンCは必要?

    健康なイヌやネコはビタミンCを体内で合成することができるので、ビタミンCを敢えて与える必要はありません。

     ヒトの場合はビタミンCは身体に良い、もしくは健康に欠かせないもの、というイメージがあるようで、そのために動物に与えることについても肯定的な意見があるようですが、実際にはイヌやネコを含むほとんどの健康な動物には与える必要がありません。
     一般的に家庭で飼育される動物種のうち、ビタミンCの補給が必要なのはモルモットだけでしょう。
     哺乳類、鳥類、爬虫類、両生類、軟骨魚類などを含めた大多数の動物は、体内でブドウ糖からビタミンCを合成することができます。
     ブドウ糖の分子式は「C6H12O6(炭素6個、水素12個、酸素6個)」、ビタミンCは「C6H8O6(炭素6個、水素8個、酸素6個)」で、組成が似ているのがわかります。

     体内でビタミンCを合成できず、飲食物からビタミンCの補給が必要なのは、ヒトを含む霊長類の多く(真猿類)、モルモットなど、限られた種類の生物だけです。
     ビタミンCを補給する必要があるヒトやモルモットなどは、その他大多数の動物と比較して特殊であるという言い方もできるでしょう。
     ヒトが体内でビタミンCを作れないのは、ビタミンCを体内で合成するための「グロノラクトン酸化酵素(グロノラクトンオキシダーゼ)」が遺伝的に欠損しているためです。
     モルモットの場合もヒトと同様にグロノラクトン酸化酵素の欠如が原因です。

     遺伝子解析によると、ヒトの遠い祖先である原始的な霊長類はグロノラクトン酸化酵素を持っていたようですが、この酵素の遺伝子が推定約6,000万年前に破壊された証拠と思われる痕跡が見つかっています。
     それ以前に進化の分岐があったロリスやキツネザルは祖先と同じくグロノラクトン酸化酵素を持っていますが、遺伝子破壊の影響を受けたヒトやその他の霊長類は酵素欠損状態が続いています。
     必要なビタミンCを体内合成できなくても、ヒトや霊長類の多くが生き延びてこれたのは、食物からビタミンCが補給できる環境で生活してきたためであると考えられています。

     ビタミンCが不足すると、「出血傾向(壊血病)」「骨折」「皮膚障害」などが起きやすくなり、極端に不足すると死に至る恐れがあります。
     これはヒトもモルモットも同様です。
     大航海時代に船乗りが壊血病で苦しんだのはビタミンCの不足が原因でした。
     ビタミンCの正式な物質名は「アスコルビン酸」で、ビタミンCは通称です。
     アスコルビン酸(ascorbic acid)の語源は「anti-scorbutic acid」と言われており、意味は「抗壊血病の酸」です。
    「scorbutic」は医学用語で「壊血病の」を意味する単語です。

     また、老化関連の疾患もビタミンC不足で悪化することが知られています。
     モルモット専用フードは十分なビタミンCを含んでいるはずですが、製造後の時間経過により劣化するため、古いフードを与え続けるとビタミンC欠乏症を招く恐れがあります。
     ウサギ用フードはビタミンCの含有量が不足するため、原材料や組成がモルモット用フードと似ていても、モルモットの主食には不適当です。
     ビタミンCはそれ自体が酸化されることによって、他の物質の酸化を防ぐ性質があり、それが体内でも役立っています。

     余談になりますが、この酸化防止作用を利用して、例えばペットボトルの緑茶や烏龍茶などには「酸化防止剤」としてビタミンCが添加されています。
     平成初期までは、飲料の成分表示は正式物質名表記が義務付けられていたので『酸化防止剤:アスコルビン酸』との表記でしたが、現在は通称名が認められているので、成分は以前と全く同じでも『酸化防止剤:ビタミンC』もしくは単に『ビタミンC』という表記に変わっているものが多いようです。
     なお、ビタミンCの過剰摂取は腎結石の危険性が高くなると言われていますが、飲料に添加されている程度のビタミンCの量では過剰摂取に至らないと思われます。

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