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  • ネコが「くしゃみ」「鼻水」「涙」・・・風邪(かぜ)なの?
  • 2025/04/08
  •  ネコが「くしゃみ」「鼻水」「涙」・・・風邪(かぜ)なの?

    「ネコ風邪」という俗称で呼ばれる病気がありますが、この病気はこじらせると生命の危険があるため、安易に「風邪」とは思わない方が無難です。

     「風邪」は「自然に回復する軽い病気」と誤解されやすい言葉です。
     自分のネコが風邪だと思い込むと、飼い主さんは「自然に治る」と解釈してしまいがちです。
     その結果、動物病院での受診を見合わせて悪化する恐れがあるのに加え、「こじれると死亡の可能性がある」という危機感も持てなくなると考えられますので、「風邪」という表現はお勧めできません。
     もちろん、初期のうちに適切な治療を受ければ、命を落とす可能性は低くなりますから、ネコが風邪のような症状の場合は、早めに動物病院で受診されることをお勧めします。

    【ネコの上部気道感染症候群】
     ネコの「上部気道感染症候群(カリシウイルス感染症、ヘルペスウイルス感染症など)」が、しばしば世間でネコ風邪と呼ばれる病気です。
     初期症状が「くしゃみ」「鼻汁」「結膜炎」などで始まる場合が多いためにネコ風邪と呼んでしまうのでしょうが、実際の症例では時間が経過しても自然には症状が改善せず、悪化・長期化するケースが珍しくありません。
     結膜炎が悪化して角膜に問題が波及すると視力障害が起きたり、二次感染の細菌による肺炎などが起こると死亡する可能性があります。
     また、たまたま春先にこの感染症に罹患すると、ヒトの花粉症の時期と重なり、初期症状として結膜炎やくしゃみなどが見られるため、花粉症だと誤解される例もあります。
     まだ「地域ネコ」という概念が無かった時代では、野良ネコの死亡原因の上位がこの病気でした。
     当院の近くの阪急西宮ガーデンズができる前までは阪急西宮球場がありましたが、当時の球場周囲には多数の野良ネコが生息し、この「上部気道感染症候群」が蔓延していたために死亡する例も珍しくありませんでした。
     野良ネコは早期に治療を受けることが期待できませんから、症状が悪化し死亡する例が多かったのです。

     ネコは鼻炎症状が進むと、全身の状態がまだ悪化していなくても、極端に食欲が低下する傾向があります。
     食餌量が減ると、体力・免疫力が低下し病状が悪化、さらに食欲が減退、さらに病気が重症化・・・という悪循環が短期間のうちに起こると考えられます。
     この悪循環が、野良ネコに限らず飼いネコでも起こってしまいます。
     「風邪だから、自然に治るだろう」と、飼い主さんが誤解して受診せずに何日も様子を見るのは、野良ネコが放置されて早期の治療を受けられないのと同じ状況だからです。
     実際に、この病気にかかったネコが重症になってから動物病院を受診される例は珍しくありません。
     その場合、飼い主さんが「風邪だと思って様子を見ていたら状態が悪くなってきた」と言われることが多いのです。

     なお、この病気は室内飼育のネコでもよく見られます。
     原因になるネコカリシウイルスなどは、ウイルスの感染能力が長期間続くので、飼い主さんの体や衣服、靴などに付着したウイルスが室内に持ち込まれるケースが考えられます。
     ネコの飼い主さんは当然ネコ好きな方が多いので、自宅以外でも他のネコを直接あるいは間接的に触る可能性が考えられ、その際にウイルスを付着させて帰宅し、ご自分のネコに感染させてしまう場合があるかもしれません。
     このように、病気のネコと直接接触しなくても、感染は成立してしまうのです。

     新型コロナウイルスが流行していた時期に、ウイルスが家族によって家庭に持ち込まれ、まったく外出していない人が感染してしまった事例と似たような状況と言えばご理解いただけるでしょうか。
     これらのウイルスは予防ワクチンがありますので、室内飼育ネコでも接種をお勧めします。

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